ハングリーであれ.愚か者であれ.

2005年のスタンフォード大学の卒業式でのスティーブ・ジョブスのスピーチについて,お話します.多くの人,とくに若い人にこのスピーチを聞いて(読んで)もらいたいと考えています.インターネットの検索で「ジョブス スタンフォード スピーチ」とすると見つけることができるでしょう.

このスピーチには有名なフレーズがあります.

Stay Hungry. Stay Foolish.
(ハングリーであれ.愚か者であれ.)

先日の NHK の日曜討論で江崎玲於奈 (1973年ノーベル賞) さんが,「日本に欠けているのはベンチャー企業をやるアントレプレナー(起業家).アントレプレナーは企業と研究者を結び付ける最も重要なもの.」と言っていました.その時,ジョブスのこの言葉を思い出しました.

研究を成功させるためには,研究者を束ねて一つの方向に向かわせる必要があります.これがリーダーの最も重要な仕事です.そのリーダーに求められる資質は,研究能力とは別物です.このスピーチのフレーズこそがリーダーに求められる条件と思います.

研究のアウトプットの評価 (世間が求めているもの) が変わってきています.かつては,新しい発見はそのまま評価されました.20世紀中頃まで,学術的にブレークスルーとなるような発見が相次いだからです.しかし,ここにきてそのような発見はまれになりつつあります.その一方で,世間には研究で飯を食っている大量の研究者がいます.そのような人たちに,世間は「役に立つものを創りだして欲しい」と願っています.それを実現するためには,江崎玲於奈さんが言われる「アントレプレナー(起業家)」が必要になります.

ステーブ・ジョブスは,世界で最も成功したアントレプレナーです.彼は研究者ではありません.技術者としても今一歩だったかもしれません.にもかかわらず,研究者や技術者を束ね,画期的な製品をたくさん創りました.どうしてそんなことができたのでしょうか? このスピーチを聞くと(読むと),それが少しわかったような気になります.