3 電流にはたらく力

3.1 直線電流に働く力

無限に長い直線電流どうしに働く力を考える.そのために,それが作る磁場を計算する. 磁場は微分形のアンペールの法則

$\displaystyle \nabla\times \boldsymbol{B}=\mu_0\boldsymbol{j}$ (26)

から導くのが簡単である.この直線電流から,$ r$離れた場所で積分を行う.

$\displaystyle \int\nabla\times \boldsymbol{B}\cdot\boldsymbol{n}\mathrm{d}S$ $\displaystyle =\int \mu_0\boldsymbol{j}\cdot\boldsymbol{n}\mathrm{d}S$    
     左辺にストークスの定理を応用すると    
$\displaystyle \oint\boldsymbol{B}\cdot\mathrm{d}\ell$ $\displaystyle =\mu I_2$    
$\displaystyle 2\pi r B_\theta$ $\displaystyle =\mu I_2$ (27)

これから,磁束密度は

$\displaystyle B_\theta=\frac{\mu_0I_2}{2\pi r}$ (28)

となる.この磁束密度は元々,力から定義されていた.図 8のように置かれた電線が単位長さ当たり受ける力は,

$\displaystyle \Delta F$ $\displaystyle =I_1B\Delta\ell$    
  $\displaystyle =\frac{\mu_0I_1I_2}{2\pi r}\Delta \ell$ (29)

となる.静磁場の講義のはじめにこれを磁場の定義とした.実際には,これで電流を定義 している.

式(29)に示した力は平行に導線を張った場合に働く力で ある.それに対して,平行でない場合は,

$\displaystyle \Delta F=I\Delta\ell\times\boldsymbol{B}$ (30)

となる.これをアンペールの力と言う.

図 8: 2本の平行導線に働くアンペールの力
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/Ampere_force_two_wire.eps}
図 9: 電流要素に働くアンペールの力
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/Ampere_force_current_element.eps}

3.2 長方形コイルに働く力

教科書の図6.2に書いてある通り,コイルの上下方向の力は,反対で一直線上にある.し たがって,コイルの重心を移動させる力は発生しない.トルクはどうだろうか?.ゼロで あることは直ちに理解できる.上下方向の力をそれぞれ, $ \boldsymbol{F}$ $ -\boldsymbol{F}$とすると

$\displaystyle \boldsymbol{N}$ $\displaystyle =\boldsymbol{r}_1\times\boldsymbol{F}-\boldsymbol{r}_2\times\boldsymbol{F}$    
  $\displaystyle =(\boldsymbol{r}_1-\boldsymbol{r}_2)\times\boldsymbol{F}$    
  $\displaystyle =0$ (31)

となる.直感の通り,ちゃんと計算してもコイルの上下方向の働くトルクは,キャンセルされ る.

左右方向はどうだろうか?.力の大きさが反対なので,重心を移動させる力は発生しない. しかし,トルクは発生する.左右方向の力をそれぞれ, $ \boldsymbol{F}$ $ -\boldsymbol{F}$とすると

$\displaystyle \boldsymbol{N}$ $\displaystyle =\boldsymbol{r}_3\times\boldsymbol{F}-\boldsymbol{r}_4\times\boldsymbol{F}$    
  $\displaystyle =(\boldsymbol{r}_3-\boldsymbol{r}_4)\times\boldsymbol{F}$ (32)

となる.ここで, $ (\boldsymbol{r}_3-\boldsymbol{r}_4)$は図のAからBへ向かうベクトルに等しい.した がってトルクの大きさは,

$\displaystyle N=Fa\sin\theta$ (33)

となる.方向は,コイルの左右の線と力との双方に垂直な方向である.また,力はアンペー ルの法則より,$ F=IbB$なので,トルクの大きさは,

$\displaystyle N$ $\displaystyle =IBab\sin\theta$    
  $\displaystyle =IBS\sin\theta$ (34)

となる.ここで,$ S$はコイルの面積である.このトルクを表す式は,コイルが平面であ ればどんな形状のものでも成り立つ.
ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年7月26日


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