2 非線形方程式の概要

2.1 非線形方程式と近似解の求めかた

ここでは,数値計算により非線形方程式の解を求める方法を学習する.ところで,非線形 方程式とはなんだろうか?--少し考えてみることにする.諸君が最初に学んだ非線形方程 式は,

$\displaystyle 3x^2+2x+5=0$ (1)

のような2次方程式であろう.一方,線形の方程式は

$\displaystyle 7x+4=0$ (2)

のようなものを言う.変数が1次のものを線形方程式,1次以外のものを非線形方程式と言 う.1次以外ということで,次のようなもの,

  $\displaystyle x+\sqrt{x}+5=0$   $\displaystyle 2\sin x-x=0$   $\displaystyle e^x+x=0$   $\displaystyle \frac{x}{x+5+\log x}=\cos x$   (3)

も非線形方程式である.線形の方程式は,説明するまでもなく,誰でも簡単に解ける.そ れに対して,非線形方程式は解けない-- 解析解がない--のが普通である.ここで示し た非線形方程式の例を見よ,諸君はどの方程式が解けるだろうか?.しかし,解析解のな い非線形方程式の近似解を求めなくてはならないことがしばしば生じる.技術者が装置の 設計を行う場合,そのようなことは頻繁に起こる.通常の設計では,解析解が不要な代わ りに,非常に良い精度--しばしば0.1%よりもずっと良い--で値(近似解)が必要となる.このよ うな時に,これから学習する非線形方程式の解法が役に立つ.

2.2 非線形方程式の例

具体的な問題--p[*]の最初の練習問題--について,非線形方程式を考 えることにしよう.たとえば,3次方程式

$\displaystyle x^3-3x^2+9x-8=0$ (4)

の根を求める.これの解析解を求めるのは,ほとんど不可能であろう2.こらえ性のない私 なんかは,すぐにコンピューターで計算を始める.本日は,コンピューターでこの非線形 方程式の根,実際は近似解を求める方法を学習するのである.ちなみにこの方程式の根は,

  $\displaystyle x_1=1-2\left[\frac{2}{1+\sqrt{33}}\right]^{1/3}+ \left[\frac{1}{2}\left(1+\sqrt{33}\right)\right]^{1/3}$ (5)
  $\displaystyle x_2=1+(1+\sqrt{3}i)\left[\frac{2}{1+\sqrt{33}}\right]^{1/3}- \frac{1}{2}(1-\sqrt{3}i) \left[\frac{1}{2}\left(1+\sqrt{33}\right)\right]^{1/3}$ (6)
  $\displaystyle x_2=1+(1-\sqrt{3}i)\left[\frac{2}{1+\sqrt{33}}\right]^{1/3}- \frac{1}{2}(1+\sqrt{3}i) \left[\frac{1}{2}\left(1+\sqrt{33}\right)\right]^{1/3}$ (7)

と分かっている3.そ れにしても,これらの根は良く似ている.不思議なものである.複素平面で考えると,こ れらが似ているのも分かるような気がする.

ここでは数値計算法により,実数解,すなわち$ x_1$を求める.むろん,複素数解を求め ることも可能であるが,少し難しくなる4.実際に,プログラムを作成する前に,実数解の 近似値をしめしておくのが良いだろう.それは,

$\displaystyle x_1\simeq 1.1659055841222127171\cdots$ (8)

となる.ここでの学習の最初の段階で,この近似解を求めるのである.

一般に,非線形の方程式は次の形に書き表すことができる.

$\displaystyle f(x)=0$ (9)

この方程式の解$ x$をコンピューターで求めることが,ここでの学習のテーマである.も し,方程式の右辺がゼロでない場合は,左辺へ移項して式(9)の形 にできる.線形の場合も含めた方程式の一般形は,式(9)で表現し ても良いだろう.非線形方程式(9)を解くことは,関数$ f(x)$ の値がゼロになる$ x$の値を捜す--と言い換えることができる.実際コンピューターを使っ た数値計算では,$ f(x)$の値がゼロとなる$ x$を捜すことになる.

次節からは,非線形方程式の近似解を求める2通りの計算テクニック(二分法,ニュートン法)を示す.いずれの方法も,$ y= f(x)$のx軸と交わる点,即ち$ f(x)=0$を反 復(ループ)計算を用いて探している.式(4)であれば, $ f(x)=x^3-3x^2+9x-8$として,x 軸との交点を計算計するのである.この関数$ f(x)$を図 9にしめす.x軸の交点がこの方程式の解となっているのは, 中学生の時に学習したとおりである.

図 1: $ f(x)=x^3-3x^2+9x-8$の関数.x軸との交点が解である.
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.7]{figure/function_solution/ShapeOfFunction.eps}
式(4)は3次方程式であるが,ここで用いる数値計算のテクニッ クで解ける問題はべき乗の多項式とは限らない.関数の値がゼロとなる点を捜しているだ けだからである.計算に用いれる領域が連続であれば,どんな方程式でも解ける.三角関 数や指数関数,分数の形でも関係なく解ける.
ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成18年7月11日


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