2 台形公式

2.1 台形公式の求め方

定積分、

$\displaystyle S=\int_a^bf(x)dx$ (3)

の近似値を数値計算で求めることを考える。積分の計算は、先に示したように面積の計算 であるから、図2のように台形の面積の和で近似ができるであ ろう。積分の範囲$ [a,b]$$ N$等分した台形で近似した面積Tは、

\begin{equation*}\begin{aligned}T&=h\frac{f(a)+f(a+h)}{2}+ h\frac{f(a+h)+f(a+2h)...
...{2}\sum_{j=0}^{N-1}\left[f(a+jh)+f(a+(j+1)h)\right] \end{aligned}\end{equation*}

となる。これが数値積分の台形公式である。なんのことはない、積分を台形の面積に置き 換えているだけである。
図 2: 積分と台形の面積の比較
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/trapezoidal.eps}

2.2 台形公式の誤差について

台形公式による数値積分では、分割数$ N$を大きくするとその誤差は小さくなることは直 感で分かる。それでは、分割数を増やしていくとどのように精度が良くなるのか考えてみ よう。

まずは、式4のある一つの台形の面積と実際の積分の値を比較する。台 形の面積$ t$は、台形公式より、

$\displaystyle t=\frac{h}{2}[f(x_1)+f(x_1+h)]$ (5)

となる。これを実際の積分

$\displaystyle s=\int_{x_1}^{x_1+h}f(x)dx$ (6)

と比較することにする。これら2つの式の形がぜんぜん違うので比較できないと考えるか もしれないが、このような場合の常套手段がある。このようなときには、テーラー展開を すれば良いのである。式(5)を$ x_1$の周りで、テイラー展開す ると

\begin{equation*}\begin{aligned}t&=\frac{h}{2}[f(x_1)+f(x_1+h)] &=\frac{h}{2}\...
...c{f^{\prime\prime\prime}(x_1)}{2\times3!}h^4+\cdots \end{aligned}\end{equation*}

となる。これが台形の面積のテイラー展開である。一方、積分の 式(6)もテイラー展開する。これは、

\begin{equation*}\begin{aligned}s&=\int_{x_1}^{x_1+h}f(x)dx  %
&=\int_0^hf(x_...
...f^{\prime\prime\prime}(x_1)}{4\times 3!}h^4 +\cdots \end{aligned}\end{equation*}

となる。この2つの式(7)と ( 8)が台形での近似と まっとうに積分を行ったときのテイラー展 開を表す。これらの式を比べると、刻み巾$ h$の2 次まで一致している。異なるのは3次以 降で、積分の誤差は、

\begin{equation*}\begin{aligned}\vert s-t\vert&=\frac{f^{\prime\prime}(x_1)}{2\t...
...h^4) &=\frac{f^{\prime\prime}(x_1)}{12}h^3+O(h^4) \end{aligned}\end{equation*}

と表せる。即ち、積分を台形で近似したひとつの区間の誤差は、刻み幅の$ h^3$で効いて くるのである。従って、積分のトータルの誤差は、それを区間の個数$ N$を乗じた

\begin{equation*}\begin{aligned}\vert S-T\vert&=N\vert s-t\vert &=N\frac{f^{\p...
...\frac{f^{\prime\prime}(x_1)}{12}\frac{(b-a)^3}{N^2} \end{aligned}\end{equation*}

となる。要するに積分の誤差は、分割数$ N^2$に反比例する。分割数を10倍に すれば、積分の誤差は1/100になるわけである。
ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成17年1月25日


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