1 前回の復習と本日の学習内容

1.1 前回の内容

前回は,これまでの学習の確認試験を行った.統計データについては,後日報告する.

1.2 本日の内容

最初に断っておくが,私は数学の専門家ではない.しかし,数学をよく使いいろいろな場 面でお世話になっている.そのため,厳密な証明よりも実際の場面で使えるように直感的 に理解することの方を重要視している.この講義では,分かり難く退屈な証明よりも感覚的 に理解することを目指す.その方が実際の科学技術の問題を数学を使って解決するときに 役に立つ.ただ,厳密な数学の証明が不要というわけではない.それは,数学の講義に任 せることにする.

本日は,三角関数に関する諸公式をオイラーの公式(Euler's formula)より簡単に導く方 法を示す.この講義のメインテーマであるフーリェ解析(Fourier analysis)では三角関数 に係わる計算が多い.三角関数の性質が分かっていないと,計算ができなくなる.そこで, 本日の講義では,以下のような順序で三角関数の諸々の定理を導く.

  1. 任意の関数を冪級数(power series)に展開するテイラー展開(Taylor expansion),ここではその特別な場合のマクローリン展開(Maclaurin's expansion)を示す.テイラー展開を用いると,任意の関数$ f(x)$

    $\displaystyle f(x)$ $\displaystyle =f(0)+f^\prime(0)x+\frac{f^{\prime\prime}(0)}{2!}x^2+ \frac{f^{(3)}(0)}{3!}x^3+\cdots$    
      $\displaystyle =\sum_{n=0}^{\infty}\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n$ (1)

    と表すことができる.
  2. 三角関数や指数関数もテイラー展開可能である.それらを,冪級数で表すと

      $\displaystyle \sin x = x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\frac{x^7}{7!}+ \frac{x^...
...frac{x^{11}}{11!}+\cdots =\sum_{n=1}^{\infty}(-1)^{n+1}\frac{x^{2n-1}}{(2n-1)!}$ (2)
      $\displaystyle \cos x = 1-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}-\frac{x^6}{6!}+ \frac{x^8}{8!}-\frac{x^{10}}{10!}+\cdots =\sum_{n=0}^{\infty}(-1)^{n}\frac{x^{2n}}{(2n)!}$ (3)
      $\displaystyle e^x=1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!}+ \frac{x^5}{5!}+\frac{x^6}{6!}+\cdots =\sum_{n=0}^{\infty}\frac{x^n}{n!}$ (4)

    となる.これら,オイラーの公式

    $\displaystyle e^{ix}=\cos x+i\sin x$ (5)

    を導くことができる.
  3. オイラーの公式から,三角関数に関する諸々の定理--加法定理や倍角の公式など-- をしめす.
これを理解すると,三角関数に係わるいろいろな問題が簡単に計算できるようになる.そ ればかりではなく,来年学習する複素関数などの学習にもスムーズに移行できるであろう. さらに,数学のみならず,電気に関係する問題も簡単に計算できるようになる.


ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成18年10月27日


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