1 本日の学習内容

1.1 これまでの復習

1に示すように$ x$軸と垂直な弦の振動の方程式を考える.$ x$軸か らの弦の変位を$ y(x,t)$とする.場所$ x$と時刻$ t$を決めたら弦の変位が決まるので,変 位は$ y(x,t)$と表すことができる.弦の変位は$ y(x,t)$は,弦の長さ$ L$に比べて十分小 さい場合,次の偏微分方程式が成り立つ.

$\displaystyle \if 12 \cfrac{\partial y}{\partial t} \else \cfrac{\partial^{2} y...
... x} \else \cfrac{\partial^{2} y}{\partial x^{2}}\fi \qquad(c^2=T/\rho,\,c\ge 0)$ (1)

これを波動方程式と言う.
図 1: 弦の振動の様子.
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/string_vib.eps}
波動方程式(1)--偏微分方程式のひとつ--の解を,

$\displaystyle y(x,t)=X(x)T(t)$ (2)

とそれぞれの変数の関数の積の形になると仮定する.これを変数分離形と言う.この仮定 した解を元の偏微分方程式に代入する.すると,

$\displaystyle X(x)T^{\prime\prime}(t)=c^2X^{\prime\prime}(x)T(t)$ (3)

が得られる.これは,

$\displaystyle \frac{T^{\prime\prime}(t)}{c^2T(t)}=\frac{X^{\prime\prime}(x)}{X(x)}$ (4)

となる.この左辺は時刻$ t$のみの関数で,右辺は場所$ x$のみの関数である.これが等し いということは,両辺の値は定数でなくてはならない.この定数を$ -\lambda$とすると,

$\displaystyle \frac{T^{\prime\prime}(t)}{c^2T(t)}=\frac{X^{\prime\prime}(x)}{X(x)}=-\lambda$ (5)

となる.これを整理すると,

  $\displaystyle X^{\prime\prime}(x)+\lambda X(x)=0$ (6)
  $\displaystyle T^{\prime\prime}(t)+\lambda c^2T(t)=0$ (7)

という連立常微分方程式になる.弦の振動の場合,図1に示すように 弦の両端で固定されている.固定されている部分では,弦の変位$ y(x,t)$はゼロである. したがって,

  $\displaystyle X(0,t)=0$   $\displaystyle X(L,t)=0$   (8)

である.この条件--境界条件--を満たすことができるのは,

  $\displaystyle X(x)=B_n\sin\frac{n\pi x}{L}$   $\displaystyle \lambda=\left(\frac{n\pi}{L}\right)^2$   (9)

である.時刻の項の常微分方程式(7)は,

$\displaystyle T^{\prime\prime}+\left(\frac{n\pi c}{L}\right)^2T=0$ (10)

となる. $ (n\pi c/L)^2$は正の実数であるので,一般解は

$\displaystyle T(t)=a_n\cos\frac{n\pi ct}{L}+b_n\sin\frac{n\pi ct}{L}$ (11)

となる.空間および時刻の常微分方程式から得られた解を元の仮定した解 (2)に代入すると

$\displaystyle y_n(x,t)= C_n\sin\frac{n\pi x}{L}\cos\frac{n\pi ct}{L}+ D_n\sin\frac{n\pi x}{L}\sin\frac{n\pi ct}{L}$ (12)

となる.元の波動方程式は線形なので,重ね合わせの原理が成り立つ.すなわち,解は

$\displaystyle y(x,t)$ $\displaystyle =\sum_n y_n(x,t)$    
  $\displaystyle =\sum_n\left(C_n\sin\frac{n\pi x}{L}\cos\frac{n\pi ct}{L}+ D_n\sin\frac{n\pi x}{L}\sin\frac{n\pi ct}{L}\right)$ (13)

と書き表すことができる.

1.2 本日の学習内容

本日は,波動方程式(1)のに初期条件を組み込む方法を学習する.教科書  [1]では,p.250-251の範囲である.ただし,教科書では初期条件とは言 わないで境界条件としている.同じことではあるが,電気の習慣に従うことにする.本日 のゴールは,次のとおりとする. 具体的には,波動方程式の解である式(13)の$ C_n$$ D_n$の値を決め る.
ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年2月22日


no counter