3 電気回路に応用

3.1 導関数のフーリエ変換

導関数のフーリエ変換は,非常に重要で電気の問題にしばしば表れる.多分,諸君は知ら ないうちにそれを使っている.ここで,ちゃんとした話としておこう.

導関数 $ f^\prime(t)$のフーリエ変換を$ g(\omega)$とする.部分積分を利用すると,

$\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^\infty \if 11 \frac{\,\mathrm...
...frac{i\omega}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^\infty f(t)e^{-i\omega t}\,\mathrm{d}t$ (20)

が得られる.自然界の物理量$ f$は, $ f(-\infty)=f(\infty)=0$である.したがって,こ の式の第一項は,ゼロに収束し,

$\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^\infty \if 11 \frac{\,\mathrm...
...t{2\pi}}\int_{-\infty}^\infty f(t)e^{i\omega t}\,\mathrm{d}t =i\omega F(\omega)$ (21)

となる.ようするに導関数のフーリエ変換は,元の関数の$ -i\omega$倍である.$ n$階の 導関数でも同様に,

$\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^\infty \if 1n \frac{\,\mathrm...
...} f(t)}{\,\mathrm{d}t^{n}}\fi e^{i\omega t}\,\mathrm{d}t =(i\omega)^n F(\omega)$ (22)

となる.

3.2 RL回路

9のRL直列回路のインピーダンスを考える.インダクタンスを$ L$, レジスタンスを$ R$とした場合のキルヒホッフの法則は,

$\displaystyle V(t)-RI(t)+L \if 11 \frac{\,\mathrm{d}I(t)}{\,\mathrm{d}t} \else \frac{\,\mathrm{d}^{1} I(t)}{\,\mathrm{d}t^{1}}\fi =0$ (23)

となる.ただし,電源の電圧は電流の流れる方向を正としている.電源電圧は時間ととも に変化する.それにしたがい回路に流れる電流も変化する.これの両辺に $ e^{i\omega
t}/\sqrt{2\pi}$を乗じて区間 $ [-\infty,\infty]$で積分を行う.

$\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^\infty V(t)e^{i\omega t}\,\ma...
...hrm{d}t =\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^\infty 0e^{i\omega t}\,\mathrm{d}t$ (24)

式(23)を使って,整理すると

$\displaystyle \tilde{V}(\omega)-R\tilde{I}(\omega)-i\omega L\tilde{I}(\omega)=0$ (25)

となる.ここで, $ \tilde{V}(\omega)$$ V(t)$のフーリエ変換, $ \tilde{I}(\omega)$$ I(t)$のフーリエ変換である.電源から見た回路のインピーダンス--周波数の関数--は

$\displaystyle Z(\omega)=\frac{\tilde{V}(\omega)}{\tilde{I}(\omega)}$ (26)

と定義できる.したがって,図9の電源から見たインピーダンスは, 式(25)より,

$\displaystyle Z(\omega)=R+i\omega L$ (27)

となる.電気回路でいつも見る式である.諸君は知らず知らずのうちにフーリエ変換を使っ ていたのである.
図 9: RL直列回路
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/LR_series.eps}

ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年2月22日


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