4 線素、面積素、体積素

4.1 線素

座標系を変えた場合の空間での距離を考える。空間の非常に近い2点$ P,Q$を考える。それ ぞれの点を、カーテシアン座標系では$ P(x,y,z)$ $ Q(x+dx,y+dy,z+dz)$とする。すると、 2点間の距離$ ds$

$\displaystyle ds^2=dx^2+dy^2+dz^2$ (21)

となる。中学校以来おなじみの3平方の定理である。

それでは、これを一般化して、他の直交座標系でも成り立つのであろうか?。これは、成 り立つはずもなく、 $ ds \neq du_1^2+du_2^2+du_3^2$である。そこで、他の座標系の場合、 距離$ ds$がどうなるか、もう少しまじめに考えよう。$ ds$の2乗は、変位ベクトル $ d\boldsymbol{r}$自身の内積に等しい。変位ベクトルは式(17)を使え ば簡単に求められる。これらをまとめると

$\displaystyle ds^2$ $\displaystyle =d\boldsymbol{r}\cdot d\boldsymbol{r}$    
  $\displaystyle =\left( h_1\hat{\boldsymbol{u}}_1du_1+ h_2\hat{\boldsymbol{u}}_2d...
...{u}}_1du_1+ h_2\hat{\boldsymbol{u}}_2du_2+ h_3\hat{\boldsymbol{u}}_3du_3\right)$    
  $\displaystyle = \left(h_1du_1\right)^2+ \left(h_2du_2\right)^2+ \left(h_3du_3\right)^2$ (22)

となる。この$ ds$を線素という。

これは、これで正確であるが、こんな計算をするまでもなくスケール因子の役割をわかり やすく記述する式(20)を使う方が良い。この方がストレー トで憶えやすい。

$\displaystyle ds^2$ $\displaystyle =ds_1^2+ds_2^2+ds_3^2$    
  $\displaystyle =\left(h_1du_1\right)^2+\left(h_2du_2\right)^2+\left(h_3du_3\right)^2$ (23)

直交曲面座標を使っているので簡単である。

4.2 面積素

カーテシアン座標系の面積素は、$ dxdy$のように表される。$ dx$は、$ y$$ z$を固定して、 $ x$を微少変位させた長さである。同様に、$ dy$は、$ x$$ y$を固定して、$ y$を微小変化 させたものである。この場合、$ dx$$ dy$はお互いに直交しているので、それが作る長方 形の面積は、$ dxdy$となる。これが面積素で、これを足しあわせる(積分)と、その面の面 積になる。ここでは、曲線座標でどのようになるか計算する。これは、後の微分演算子を 求めることに使われる。

座標を$ du_i$微少変位させた軌跡と、$ du_j$微少変位させた軌跡で作られる平行四辺形 5の面積$ dS_{ij}$とする。その面積は、ベ クトル積の絶対値として計算できるので

$\displaystyle dS_{ij}$ $\displaystyle =\left\vert d\boldsymbol{r}_i \times d\boldsymbol{r}_j \right\vert$    
  $\displaystyle =\left\vert h_i\hat{\boldsymbol{u}}_idu_i \times h_j\hat{\boldsymbol{u}}_jdu_j \right\vert$    
  $\displaystyle =h_ih_jdu_idu_j$ (24)

となる。これが曲線座標の面積素である。

なにも、ベクトル積を計算しないまでも、 $ d\boldsymbol{r}_i$ $ d\boldsymbol{r}_j$は直交することと、 それぞれの大きさは$ h_idu_i$$ h_jdu_j$から、その面積は $ h_ih_jdu_idu_j$と直接計算 できる。ここでもスケール因子が便利であることがわかる。さらに、直交座標系を使うこと の恩恵を被ることができる。

4.3 体積素

体積素も面積素と考え方はおなじである。従って、体積素$ dV$

$\displaystyle dV$ $\displaystyle =\left(d\boldsymbol{r}_1 \times d\boldsymbol{r}_2\right) \cdot d\boldsymbol{r}_3$    
  $\displaystyle =\left(h_1\hat{\boldsymbol{u}}_1du_1 \times h_2\hat{\boldsymbol{u}}_2du_2 \right) \cdot h_3\hat{\boldsymbol{u}}_3du_3$    
  $\displaystyle =\left[\left(\hat{\boldsymbol{u}}_1 \times \hat{\boldsymbol{u}}_2 \right) \cdot \hat{\boldsymbol{u}}_3\right]h_1h_2h_3du_1du_2du_3$    
     式(8)から    
  $\displaystyle =h_1h_2h_3du_1du_2du_3$ (25)

となる。これも、こんな計算をするまでもなく、直交座標系であることと、スケール因子 が理解できていれば、直感的に求めることができる。

体積素はこれで終わりであるが、ヤコビ行列$ J$との関係を少し述べておく。座標変換を行っ た場合の体積素は、

$\displaystyle dxdydz$ $\displaystyle = \begin{Vmatrix}\if 11 \frac{\partial x}{\partial u_1} \else \fr...
... \else \frac{\partial^{1} x}{\partial u_3^{1}}\fi \\ \end{Vmatrix} du_1du_2du_3$    
  $\displaystyle =\left\vert J\right\vert du_1du_2du_3$ (26)

の関係がある。これと式(25)から、 $ \vert J\vert=h_1h_2h_3$ と推測ができる。しかし、式(26)の行ベクトルが直交して いるという条件を使い、行列式を計算するのは大変やっかいである。そこで、行列式の見方を変え ることにする。行列式の値は、その行ベクトルが作る平行6面体の体積に等しいはずであ る。この場合、行ベクトルは直交しているので直方体になる。その体積は簡単で、それぞ れのベクトルの大きさを乗算すればよい。従って、

$\displaystyle \vert J\vert$ $\displaystyle = \sqrt{ \left( \if 11 \frac{\partial x}{\partial u_1} \else \fra...
...l z}{\partial u_1} \else \frac{\partial^{1} z}{\partial u_1^{1}}\fi \right)^2 }$    
  $\displaystyle \qquad\qquad\times\sqrt{ \left( \if 11 \frac{\partial x}{\partial...
...l z}{\partial u_1} \else \frac{\partial^{1} z}{\partial u_1^{1}}\fi \right)^2 }$    
  $\displaystyle \qquad\qquad\qquad\qquad\times\sqrt{ \left( \if 11 \frac{\partial...
...l z}{\partial u_1} \else \frac{\partial^{1} z}{\partial u_1^{1}}\fi \right)^2 }$ (27)

となるのは、明らかであろう。この式の右辺は、$ h_1h_2h_3$である。ヤコビ行列を使っ ても同じ結果が得られるのである。
ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成20年3月24日


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