A. 変分法

計算領域$ \Omega$でのポテンシャルを$ \phi$とする.このポテンシャルをパラメーターと した汎関数$ U[\phi]$

$\displaystyle U[\phi]=\int_V \frac{\varepsilon}{2}\left(\nabla \phi \cdot\nabla \phi \right) \mathrm{d}V$ (19)

を考える.これから,この汎関数が停留値をとるとき,そのときの$ \phi$はラプラス方程 式を満足することを示す.ラプラス方程式を満足するので,真の解となる.

汎関数が停留値になる条件は,その第一変分がゼロである.式(21)の 凡関数の第一変分$ \delta U$

$\displaystyle \delta U=\left\{\lim_{\alpha\rightarrow 0}\frac{U[\phi+\alpha v]-U[\phi]}{\alpha}\right\}\alpha$ (20)

である.ここで$ \alpha$は任意の実数,$ v$は領域$ \Omega$の境界ではゼロとなる任意の関数で ある.したがって,汎関数の式(21)の第一変分は,

$\displaystyle \delta U$ $\displaystyle =\left\{ \lim_{\alpha\rightarrow 0}\frac{ \int_{\Omega}\frac{\var...
...arepsilon}{2}\nabla \phi \cdot\nabla \phi \mathrm{d}V } {\alpha} \right\}\alpha$    
  $\displaystyle =\alpha\int_{\Omega}\varepsilon\nabla\phi\cdot\nabla v\mathrm{d}V$ (21)

となる.ここで,次の微分

$\displaystyle \div{(\varepsilon v \nabla \phi )}=\varepsilon\nabla v\cdot\nabla \phi +v\div{(\varepsilon\nabla \phi )}$ (22)

を使うと,汎関数式(23)は

$\displaystyle \delta U$ $\displaystyle =\alpha\int_{\Omega}\div{(\varepsilon v \nabla \phi )}\mathrm{d}V -\alpha\int_{\Omega}v\div{(\varepsilon\nabla \phi )}\mathrm{d}V$    
  $\displaystyle =\alpha\int_{\Omega}\varepsilon v \nabla \phi \cdot\boldsymbol{n}\mathrm{d}S -\alpha\int_{\Omega}v\div{(\varepsilon\nabla \phi )}\mathrm{d}V$ (23)

となる.右辺第一式の積分はゼロとなる.なぜならば,関数$ v$は考えてる領域 $ \Omega$の境界でゼロとなる関数であるからである.したがって,

$\displaystyle \delta U=-\alpha\int_{\Omega}v\div{(\varepsilon\nabla \phi )}\mathrm{d}V$ (24)

である.汎関数の第一変分$ \delta U$がゼロとなるためには,

$\displaystyle \div{(\varepsilon\nabla \phi )}=0$ (25)

とならなくてはならない.関数$ v$は任意の関数であるため, $ \div{(\varepsilon\nabla \phi )}$がゼロの場合のみ積分の値がゼロになる. $ \div{(\varepsilon\nabla \phi )}$がゼロでなくても特定の$ v$で積分がゼロになることは ある.しかし,任意の$ v$となると話は別である.

ここでの結論は,「式(21)の汎関数の第一変分をゼロにすることと, 式(27)の微分方程式と解くことは等価」である.ようするに,式 (27)の微分方程式の解は,式(21)の積分が停 留値--しばしば極小値--になるような関数$ \phi$と同一である.

式(21)の積分は,静電場のエネルギーになっている.境界条件を満た しつつ,このエネルギーが最低になる状態が実際の状態である.ここでは,この積分が極 小になる$ \phi$を計算することになる.

この静電場も最小エネルギーの問題になっている.しばしば,物理的に安定な状態はエネ ルギーが最低になる.この静電場の問題もその例の一つである.


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著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年8月20日


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