Yamamoto's Laboratory
 
RF 測定
空洞ギャップ
 
 
 
 
研究 加速器 測定 空洞ギャップ

共振空洞の小さいギャップ

薄いギャップがある高周波空洞のQ値は低下します..

目次


はじめに

加速器を作っている時,しばしば共振周波数やQ値を測定します(図1, 図2).共振周波数はほぼ計算通りになりますが,Q値はなかなかそうはなりません.計算値の半分以下になることも,多々有ります.この原因は不十分な空洞内部の接触によります.それも,空洞表面のごくごく僅かな部分の接触が影響します.

図1: 進行波型加速セルのRF測定

図2: サイドカップルセル

空洞内面近くの接触面の面圧を上げることにより,このQ値の低回を回避することができます.具体的には,図??に示す方法で計算に近いQ値が得られます.実験ではこの方法は有効ですが,実機では狭い幅の接触面を設けることができない場合もあります.そこで,接触面に銀ペーストを塗布し接触をとる方法も使われます.この方法の問題点は,測定後の銀ペーストの除去です.これを綺麗に取り除くは,結構な手間です.

この接触面の問題を新日本無線(株)の人と話していたら「エタノールをかけると良い」と言われました.半信半疑で試したところ,Q値が上がり,とても驚きました.これは,手軽でとても効果のある方法です.

薄いギャップ

薄いギャップによりQ値が低下することは,直感的に理解できます.薄いギャップに電流が流れ込みロスが増えるから,

エタノールを挿入

エタノールの誘電率のデータは,参考資料[1]から得られます.

図3: エタノールの誘電率

SUPERFISH 計算

計算モデル

図4: ギャプ無しモデル

図5: ギャプ有りモデル

計算結果

SUPERFISH でのギャップ有り/無しモデルの計算
計算条件 ギャップ無し ギャップ有り 図5
図4 g=1μm g=10μm g=100μm
計算コード fish fish cfish fish cfish fish cfish
誘電体なし f/MHz 2868.56 2868.54 2868.54 2868.35 2868.35 2866.48 2866.48
Q 15128.3 11630.5 11630.5 11616.1 11616.1 11559.0 11559.0
ε=(1.0, 0.0) f/MHz 2868.56 2868.54 2868.56 2868.35 2868.56 2866.48
Q 12218.1 11619.8 12218.6 11615.5 12221.3 11559.0
ε=(3.0, 0.0) f/MHz 2868.56 2868.53 2868.56 2868.27 2868.56 2865.70
Q 12219.2 9579.8 12220.3 9566.5 12217.8 9471.4
ε=(6.0, 0.0) f/MHz 2868.56 2868.48 2868.56 2867.78 2868.56 2860.61
Q 12216.8 2540.0 12220.9 2532.7 12222.1 2485.2
ε=(6.0, 6.0) f/MHz 2868.55 2868.48 2867.74
Q 10004.4 4806.0 770.4

ページ作成情報

参考資料

  1. 八戸工業大学 工学部 電子知能システム学科の柴田幸司さんの「マイクロ波帯における液体の複素誘電率測定に関する研究」に,エタノールの誘電率の測定データがあります.

更新履歴

2021年07月24日 ページの新規作成


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