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TRACE-3D
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ビームダイナミック計算TRACE 3-D
TRACE-3Dの使い方をメモしておきます.
目次
インストール方法
ダウンロード
ソフトウェアーは,Los Alamos National Laboratory の LAACG の Download Area for Trace からダウンロードします.
まずは,Trace Registratin の Registration Form に記述します.Registration Page for LAACG Users に記載すると,ダウンロードが可能になります.そして,Windows の Trace Installer「Download Installer (3D)」をダウンロードしました.DOS 版は 32 ビットアプリケーションなので,後述する特殊なことをしない限り,64 ビットの PC では動作しません.Windows 版も32ビットアプリケーションですが,動作します.
以降の説明は,このダウンロードした Windows 番 TRACE3D「Trace3d.zip」についての説明です.
Windows へインストール
ダウンロードした「Trace3d.zip」を Windows にインストールします.方法は,以下のとおりです.
- ファイルを解凍します.すると,フォルダー「Trace3d」が出来上がります.中のファイルは,(examplea.t3d, exampleb.t3d, examplec.t3d, exampled.t3d, trace3d.exe) です.
- このフォルダーごと,C:\Program Files (x86) にコピーします.
- デスクトップに,trace.exe のショートカットを作成する.
- C:\ProgramData\Microsoft\Windows\Start Menu\Programs に,そのショートカットを移動させます.ただし,Start Menu がスタートメニュ,Programs がプログラムとなっている場合があります.
以上でインストールは,完了です.これで,Windows のスタートに登録が完了です.
DOS 版の実行方法
DOS 版の TRACE3D は,Windows のコマンドプロンプトで実行することができません.コマンドプロンプトでは,32ビット版のアプリケーションを実行できないからです.その場合でも DOSBox を使えば, 実行可能です.これを使うと,動作しました.しかし,私には DOS 版の使い方が分からず,以降は DOS版については説明しません.
実行方法
マニュアル
マニュアルは,Download Area for Trace は Documentation にあります.
実行方法
実行方法は,簡単です.以下のようにすると,ダウンロードしたファイルに含まれる「examplea.t3d」を入力として実行できます.
- メニューの trace3D を選択します.
- File > Open から,「examplea.t3d」を選択します.
- あとはコマンド (Commads) を実行するだけです.
コマンド
TRACE3D のコマンドを以下に示す.メインメニューの から選択できます.また,キーボードからコマンドを入力できます.アルファベットの1文字あるいは記号をタイプするだけです.
| コマンド | 元英語 | 動作内容 |
| A |
ADD |
ビームラインにエレメントを追加 |
| B |
BEAM |
ビームと配列に保管されたビームの表示 |
| C |
PARMILA |
Parmila 単位でのビームパラメーターの表示 |
| D |
DELETE |
ビームラインからエレメントの削除 |
| E |
END |
プログラムの終了 |
| F |
PHASE |
位相の進みの計算と表示 |
| G |
GRAPH |
背景とトレースビームのプロファイルのグラフ |
| I |
INPUT |
新たなパラメーターの入力 |
| J |
PROJECT |
[(x, y), (x, z), (x, dp/p)] の射影のプロット |
| K |
PERIODIC |
周期構造の生成 (RFQ or DTL) |
| L |
ELLIPSE |
測定値からの発生地点の楕円を計算 |
| M |
MATCH |
MT パラメーターによって定義されたマッチングを実行 |
| N |
MATCH |
反復出力なしで「M」のように一致(??) |
| O |
MISMATCH |
ミスマッチファクターの計算と出力 |
| P |
PRINT |
データファイルの表示 |
| Q |
QUERY |
あるエレメントのデータの表示 |
| R |
R-MATRIX |
最後の実行のR行列の表示 |
| S |
SAVE |
データファイルの保管 |
| T |
TRACE |
表示されているグラフに重ねてビームをトレース |
| U |
USER |
マッチングパラメーターレンジ (MT=7,8,9) の探索あるいは設定 |
| V |
VARIABLES |
マッチング変数の値を表示 |
| W |
PHI-W |
位相とエネルギーの情報の表示 |
| X |
EXCHANGE |
ビームの値と保管されている値の交換 |
| Y |
NOTE |
グラフ上にテキストを書き込み (場所は自由に設定可能) |
| Z |
SIGMA |
変形された σ 行列を表示 |
| ! |
UNMATCH |
プレマッチ値に戻す |
| @ |
APERTURE |
プロファイルとアパーチャーデータファイルのオープンとクローズ |
| # |
NEWFILE |
新しいデータファイルの読み込み |
| * |
CENTROID |
ビーム重心情報の印刷 |
| & |
COMMENT |
データファイル中のコメントをディスプレイに表示 |
入力データ(サンプル)の内容と実行
サンプルファイルの内容
ダウンロードしたファイルの中の「examplea.t3d」を例に説明します.
入力ファイルは,25 [πmm-mrad] の横方向エミッタンスと 700 [π deg-keV] の縦方向エミッタンスを持つ 2 [MeV] 陽子ビーム (静止エネルギー: 938.28 [MeV])を定義します.トランスポートシステムは,400 [MHz] の RFQ の最後の2つのセルと,100 [mm] のドリフトスペースで区切られた 400 [MHz] の DTL の最初の2つのセルで構成されます.このドリフトスペースは,ドリフト,四重極,および横方向と縦方向のマッチングのための RF ギャップに後で置き換えられます.
対象のビーム電流は 75 [mA] ですが,ゼロ電流のマッチングが最初に行われます.
2 つの加速構造の設計に単位長さごとに同様の集束強度が含まれる場合,ゼロ電流で見つかった一致はどの電流でも許容できるはずです.
特に永久磁石の四重極を使用する場合(この例のように),複数電流の一致が優先されます.最初のステップは,ゼロ電流で RFQ の出口で一致する楕円パラメーターを決定することです.次に 75 [mA]です.
このためには,2つのRFQセルがフォーカシングシステムの1つの期間でなければなりません.V/r02および AV の値は,それぞれ 5.5 [kV/mm2]および 57 [kV] です.
001 &DATA
002 ER= 938.28000 Q= 1. W= 2.00000 XI= 0.000
003 EMITI = 25.000000 25.000000 700.000000
004 BEAMI = -1.36488 0.14124 1.51252 0.16683 0.03672 0.33845
005 BEAMF = -1.36488 0.14124 1.51252 0.16683 0.03672 0.33845
006 BEAMCI= 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000
007 FREQ= 400.000 PQEXT= 2.50 ICHROM= 0 IBS= 0 XC= 0.0000
008 XM= 10.0000 XPM= 50.0000 YM= 5.00 DPM= 30.00 DWM= 100.00 DPP= 30.00
009 XMI= 10.0000 XPMI= 50.0000 XMF= 10.0000 XPMF= 50.0000
010 DPMI= 30.0000 DPMF= 30.0000 DWMI= 100.0000 DWMF= 100.0000
011 N1= 1 N2= 2 SMAX= 5.0 PQSMAX= 2.0 NEL1= 1 NEL2= 2 NP1= 1 NP2= 15
012 MT= 4 NC= 6 IPLANE= 0 0 0 MP=0,000 0,000 0,000 0,000 0,000 0,000
013 MVC=0,000,0 0,000,0 0,000,0 0,000,0 0,000,0 0,000,0
014 VAL= 0.0000000 0.0000000 0.0000000 0.0000000 0.0000000 0.0000000
015 CMT(001)='RFQ CELL' NT(001)= 11 A(1,001)= 5.5000000 57.000000 24.430000 -30.000000 0.00000000E+00
016 CMT(002)='RFQ CELL' NT(002)= 11 A(1,002)=-5.5000000 57.000000 24.430000 -180.00000 0.00000000E+00
017 CMT(003)=' ' NT(003)= 1 A(1,003)= 100.00000
018 CMT(004)='PMQ ' NT(004)= 4 A(1,004)= 160.00000 12.700000 6.0000000 20.000000
019 CMT(005)='PMQ ' NT(005)= 4 A(1,005)= 160.00000 12.700000 6.0000000 20.000000
020 CMT(006)=' ' NT(006)= 1 A(1,006)= 11.730000
021 CMT(007)='RF GAP ' NT(007)= 10 A(1,007)=0.81900000E-01 -35.000000 0.00000000E+00 0.00000000E+00 0.00000000E+00
022 CMT(008)=' ' NT(008)= 1 A(1,008)= 11.730000
023 CMT(009)='PMQ ' NT(009)= 4 A(1,009)=-160.00000 12.700000 6.0000000 20.000000
024 CMT(010)='PMQ ' NT(010)= 4 A(1,010)=-160.00000 12.700000 6.0000000 20.000000
025 CMT(011)=' ' NT(011)= 1 A(1,011)= 11.730000
026 CMT(012)='RF GAP ' NT(012)= 10 A(1,012)=0.81900000E-01 -35.000000 0.00000000E+00 0.00000000E+00 0.00000000E+00
027 CMT(013)=' ' NT(013)= 1 A(1,013)= 11.730000
028 CMT(014)='PMQ ' NT(014)= 4 A(1,014)= 160.00000 12.700000 6.0000000 20.000000
029 CMT(015)='PMQ ' NT(015)= 4 A(1,015)= 160.00000 12.700000 6.0000000 20.000000
030 0.00000000E+00 0.00000000E+00 0.00000000E+00
031 WS(1)= 2.00000 2.00000 2.00000 2.00000 2.00000 0.00000 0.00000
032 WS(8)= 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000
033 SIGI(1,1)= 45.216 -186.84 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
034 SIGI(1,2)=-186.84 851.67 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
035 SIGI(1,3)=0.00000E+00 0.00000E+00 34.734 157.21 0.00000E+00 0.00000E+00
036 SIGI(1,4)=0.00000E+00 0.00000E+00 157.21 815.21 0.00000E+00 0.00000E+00
037 SIGI(1,5)=0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00 131.21 14.538
038 SIGI(1,6)=0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00 14.538 111.63
039 COMENT='This is EXAMPLE-A in the TRACE-3D Documentation Manual'
040 &END
- 001行 おまじないです.
- 002行 粒子の静止エネルギー (ER) が 938.2 MeV, 電荷量 (Q) が素電荷: 1.60217662×10-19 C,運動エネルギー (W) が 2 MeV, ビーム電流 (XI) は 0 mA です.
- 002行 初期エミッタンス: (\(\varepsilon_x\), \(\varepsilon_y\), \(\varepsilon_\phi\)) = (25.0, 25.0, 700.0)です.\(\varepsilon_x\) と \(\varepsilon_y\) の単位は \(\pi\si{mm.mrad}\) で,\(\varepsilon_\phi\) の単位は \(\si{\pi.deg.keV}\) です.
- 003行 初期ビームのツイスパラエメーター (\(\alpha_x,\,\beta_x,\,\alpha_y,\,\beta_y,\,\alpha_\phi,\,\beta_\phi\)) = (-1.36488, 0.14124, 1.51252, 0.16683, 0.03672, 0.33845) です.\(\alpha_x\) と \(\alpha_y\),\(\alpha_\phi\) の単位はありません(無次元).\(\beta_x\) と \(\alpha_y\) の単位は \(\si{mm/mrad}\),\(\alpha_\phi\)は \(\si{deg/keV}\) です.
- 004行 マッチングのツイスパラエメーター (\(\alpha_x,\,\beta_x,\,\alpha_y,\,\beta_y,\,\alpha_\phi,\,\beta_\phi\)) = (-1.36488, 0.14124, 1.51252, 0.16683, 0.03672, 0.33845) です.
- 004行 初期ビームのオフセットを表します.()=()
-
入力ファイルに記載するパラメーター
ビーム特性
| 変数 | 内容 |
| ER |
粒子の静止エネルギー(m0c2)[MeV]で粒子の質量を表す.陽子の場合は938.272[MeV],電子では0.5109989[MeV]. |
| Q |
粒子の電荷を表す.陽子の場合は 1,電子では -1 とします. |
| W |
粒子の運動エネルギー[MeV]. |
| BEAMI(6) |
初期位相空間のパラメーター(ツイスパラメーター).(αx, βx, αy, βy, αφ, βφ).αは単位はありあせんが, βxとβyは[mm/mrad],βφは[deg/keV]です. |
| BEAMCI(6) |
初期ビームの中心のオフセット. |
| EMITI(3) |
初期ビームのエミッタンス(εx, εy, εφ).εxとεyの単位は[πmm-mrad],εφは[πdeg-keV]です. |
| SIGI(6) |
6×6の初期のσマトリックス. |
| XI |
ビーム電流 [mA]. |
エレメント
加速器の構成機器(エレメント)は,以下の変数(配列も含む)で決めます.計算できるエレメントの最大値(NELMAX)は,FORTRANプログラム PARAMETER 文で決まっているようで,ユーザーが変更することはできません.
| 変数 | 内容 |
| FREQ |
RF機器の周波数[MHz]. |
| PQEXT |
永久磁石型のQ磁石の漏れ磁場の長さ.その効果を磁石の半径の倍数で与えます.マニュアルの付録をみると,DTLのドリフトチューブに使われるQ磁石の計算のようです. |
| ICHROM |
色収差に関するフラグ.0:色収差によるエミッタンスの増加の計算をしない.1:計算をする. |
| CMT(NELMAX) |
各エレメントに対するコメント.通常,エレメント名を書く.シングルクォーテーションで囲んだ8文字とします.スペース等をつかって,ちょうど8文字にそろえる必要があります. |
| NT(NELMAX) |
エレメントの機器を指定する.その機器のパラメーターは,配列 A(5, NELMAX) で指定する. |
| A(5,NELMAX) |
エレメントのパラメーターを指定します. |
制御パラメーター
| 変数 | 内容 |
| N1 |
計算開始エレメント番号. |
| N2 |
計算終了エレメント番号.通常(N1<N2)は,N1で指定したエレメントの上流側から,N2の下流まで計算する.もし N1>N2 ならば,N1の出口から,N2の入口に向かって逆方向に計算する. |
| SMAX |
計算の最大ステップサイズ[mm]. |
| PQSMAX |
PQM(永久磁石型Q磁石)付近の最大ステップサイズ[mm].通常は,SMAXよりも小さい値を指定する. |
| IBS |
σマトリックスの初期値の生成方法を決めます.0:BEAMIとEMITIから計算する(通常).1:SIGI配列で指定する. |
| NP1 |
ビームプロファイルプロットを行う最初のエレメント.デフォルトは,1. |
| NP2 |
ビームプロファイルプロットを行う最後のエレメント.デフォルトは,NELMAX. |
| NEL1 |
ビームの位相空間プロットを行うエレメント番号.デフォルトは,N1. |
| NEL2 |
ビームの位相空間プロットを行うエレメント番号.デフォルトは,N2. |
マッチングパラメーター
| 変数 | 内容 |
| MT |
マッチングのタイプを指定します. |
| NC |
マッチング処理を行うときの満足すべき条件の数.MTが1-9, 12-13の場合は自動的に設定されます.MTが10-11の場合は,ユーザーが設定(NC≤6)する必要があります.MTが14の場合も,ユーザーが設定(NC≤3)します. |
| MP(2,6) |
MP(1,n)はn番目のマッチングに使うエレメントのパラメーター番号で,これを変数にしてマッチングを行います.MP(2,n)はエレメント番号を指定します.理論上,変数の数 NV は,条件の数 NC と同一になります. |
| MPE(6) |
マッチングのエレメント番号です.MP(2,n)の代わりに,MPE(6)を使うこともできます. |
| MPP(6) |
マッチングのパラメーター番号です.MP(1,n)の代わりに,MPP(6)を使うこともできます.デフォルトの値は,1です. |
| MVC(3,6) |
カップルしたパラメーターの設定を行います.MVC(1,n)はn番目のマッチング変数とカップルしたエレメントのパラメーターを表します.MVC(2,n)は,そのエレメント番号です.MVC(3,n)の値は,1あるいは-1とします.-1の場合はカップルした変数の合計が常に一定になるように変数の値は変化します.一方,1の場合はそれぞれの変数が同じ値で変化します. |
| CMV(3,6) |
これは,「Couple Matching Variable」の略で,MVC(3,6)と同じ働き,カップルしたパラメーターの設定を行います.ただし,CMV(6)の方は,文字列での指定になります.たとえば,「CMV(1)='A(1,2)'」とすると,1番目のマッチングパラメーターとエレメント番号2の1番目のパラメーターは同じ値で変化します.「CMV(4)='-A(1,32)'」とすると,4番目のマッチングパラメーターとエレメント番号32の1番目のパラメーターの合計は,常に一定の値で変化します. |
| BEAMF(6) |
MT=1-9では,この配列には,エレメント N2 の出口の位相空間のパラメーター(αx, βx, αy, βy, αφ, βφ)を格納します.このうちMT=1-4では,自動的に BEAMI の値が格納されます.MT=5-9とMT=13は,ユーザーが値を設定します.また,MT=10, 11では,配列 IJMとVAL の値が使われます. |
| DELTA |
|
| IJM(2,6) |
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| VAL(6) |
|
| NIT |
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| IPLANE(3) |
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グラフィックススケール
| 変数 | 内容 |
| XM |
横方向位相空間プロットの最大値[mm]. |
| XPM |
横方向位相空間プロットの最大値[mrad]. |
| DPM |
縦方向位相空間プロットの最大値[deg]. |
| DWM |
縦方向位相空間プロットの最大値[keV]. |
| YM |
ビームプロファイルプロットの縦軸[mm]. |
| DPP |
ビームプロファイルプロットの最大フェーズ[deg]. |
| XMI, XMF |
初期/最終位相空間プロットの最大値[mm]. |
| XPMI, XPMF |
初期/最終位相空間プロットの最大値[mrad]. |
| DPMI, DPMF |
初期/最終位相空間プロットの最大値[deg]. |
| DWMI, DWMF |
初期/最終位相空間プロットの最大値[keV]. |
| XC |
オフセットに関する設定らしいが,よく分かりません. |
ページ作成情報
参考資料
更新履歴
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