![]() |
||
| (13) |
この球を帯電していない状態で,静電場の中に置くことを考える.金属中の電場はどのよ うになるであろうか? 金属中に電場ができると,素早く電子が移動し,その電場を打ち 消すように移動する.その移動は,電場がなくなるまで続く.電場がなくなるまでの時間 はとてつもなく早い.したがって,通常の状態では,金属中の静電場はゼロとなる.
金属球を帯電させた場合は,どうなるであろうか? 金属球を絶縁体で支え,そこに向かっ て電子銃で電子を当てればよい.そのうち,電子がクーロン力により反発され,電子ビー ムがそれるが,ある程度の帯電は可能である.この場合でも,金属球内部では静電場はゼ ロになる.先ほどと同様の理由で,電場があると電子が動くからである.それでは,帯電 した電子は何処にいくのだろうか? 金属球には余分な電子があるはずである.金属球内 部に余分な電子があると,ガウスの法則により電場ができてしまう.そのようなことから, 金属内部には余分な電子はないはずである.余分な電子は,金属の表面の極薄い部分に集 まっているのである.内部に電場が生じないように表面に分布している.それらの電子は, 余分な電子から力を受けているが,他の力により金属表面にとどめられているのである.
以上のことから,金属内部での静電場はゼロと結論できる.いかなる場合でも,静電場は ゼロである.静電場ではなく,時間的に変動する電磁場でも周波数が低ければ,電場はゼ ロとなる.電場がゼロとならない周波数は,プラズマ周波数以上である.金属のプラズマ 周波数は可視光よりもずっと高い.
金属で囲まれた内部には,外部の静電場が侵入することができず,いつでも電場はゼロで ある.ノイズから機器を遮蔽するために,金属で覆うのはこのためである.静電場のみな らず,高周波の電磁場も侵入できない.完全に囲まれた空洞内部は電磁場がまったくない, 静かな世界となる.逆に,電磁場のソースが空洞内部にあると,それはまったく外に漏れ ない.外部にノイズを出さないように,金属で覆う理由となっている.
| コーヒーブレイク
余談であるが,金属が光沢があるのは,この自由電子の作用である.光の電場が金属内に
入り込もうとすると,自由電子は非常に早く移動して,それを阻止する.光の電場と同期
して,電子が移動することになる.その移動により新たに電場がつくられ,入射光と反対
方向に電磁波(光)を放射する事になる.これが反射光となり,金属は光沢を持つのである.
一般に光るものは,自由電子がふんだんにあり,電気を通しやすい.
さらにこの自由電子は熱を伝える働きもする.金属の熱伝導率が高いのも,大量に自由電 子があるからである.熱と光と全く異なった現象であるが,同じ自由電子が関与してい るのはおもしろいことである. |