4 電磁波のエネルギー

ここで,求めた自由空間の電磁波のエネルギーについて考えてみる.

4.1 ポインティングベクトル

まずは,ポインティングベクトルの復習である.ポインティングベクトルはエネルギーの 流れの密度を表した.前回の講義と異なった方法で説明しよう.実際は同じことであるが, 簡単に説明する.ベクトル恒等式とマクスウェルの方程式から,

$\displaystyle \div{(\boldsymbol{E}\times\boldsymbol{H})}$ $\displaystyle =\boldsymbol{H}\cdot\nabla\times \boldsymbol{E}-\boldsymbol{E}\cdot\nabla\times \boldsymbol{H}$    
  $\displaystyle =-\boldsymbol{H}\cdot \if 11 \frac{\partial \boldsymbol{B}}{\part...
...\partial t} \else \frac{\partial^{1} \boldsymbol{D}}{\partial t^{1}}\fi \right)$    
  $\displaystyle =-\mu\boldsymbol{H}\cdot \if 11 \frac{\partial \boldsymbol{H}}{\p...
...rtial^{1} \boldsymbol{E}}{\partial t^{1}}\fi -\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{j}$    
  $\displaystyle =- \if 11 \frac{\partial }{\partial t} \else \frac{\partial^{1} }...
...ilon\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{E}\right)- \boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{j}$ (56)

が得られる.これを任意の領域で体積積分を行う.左辺は,ガウスの定理により表面積分 になるので,

$\displaystyle \int_S \boldsymbol{E}\times\boldsymbol{H}\cdot\boldsymbol{n}\math...
...mbol{E}\right)\mathrm{d}V+ \int_V\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{j}\mathrm{d}V=0$ (57)

が得られる.ここの左辺の第二項は単位時間あたりの電磁場のエネルギーの変化を表す. 第三項の電流密度 $ \boldsymbol{j}$ $ \rho\boldsymbol{v}$となる. $ \rho\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{v}$は,粒子が 単位時間あたりに得るエネルギーである.したがって,第二項と三項は体積$ V$中の単位 時間あたりのエネルギーの変化を表す.エネルギー保存則が成り立つとすれば,

$\displaystyle \boldsymbol{S}=\boldsymbol{E}\times\boldsymbol{H}$ (58)

は単位時間,単位面積あたりのエネルギーの流れになるはずである.これは,発見者の名 前をとってポインティングベクトルと呼ばれている.

ポインティングベクトルの次元を調べてみると,エネルギー密度の流れになっている.電 場$ E$の単位は $ \mathrm{[V/m]}$,磁場の強さ $ \boldsymbol{H}$の単位は $ \mathrm{[A/m]}$である. したがって,ポインティングベクトルの単位は $ \mathrm{[VA/m^2]}$となり, $ \mathrm{[W/m^2]=[J\,sec^{-1}\,m^{-2}]}$ と書き改めることができる.たしかに,エネルギー密度の流れ になっている.

4.2 平面波のエネルギーのながれ

先ほど求めた平面波のエネルギーの流れを考える.平面波のエネルギーの密度は分かって いる.平面波の速度も光速$ c$と分かっている.したがって,単位時間に単位面積,通過 する平面波のエネルギーがわかる.このようにして計算した結果とポインティングベクト ルから計算した結果は,教科書の通り,一致する.各自,調べよ.


ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年7月26日


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