1 ガウスの法則と電位

1.1 クーロンの法則

場のベクトル量である電場 $ \boldsymbol{E}$は、その場所に置いた試験電荷が受ける力 から決められる。すなわち、

$\displaystyle \boldsymbol{F}=q\boldsymbol{E}$ (1)

である。ここで、 $ \boldsymbol{F}$は力、$ q$は試験電荷の電荷量である。ただ単にこ ういう風に、電場は定義されるということだけである。電荷$ Q$$ r_0$の位置 にあり、その電荷により、 $ \boldsymbol{r}$の位置にある試験電荷が受ける力は、クー ロンの法則

$\displaystyle \boldsymbol{F}=\frac{Qq(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r_0})}{4\pi\varepsilon \vert\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r_0}\vert^3}$ (2)

から分かっている。これは、ベクトルを使った式ではあるが、諸君が2年生(?) のときに学習したクーロンの法則

$\displaystyle F=\frac{Qq}{4\pi\varepsilon r^2}$ (3)

とほとんど同じであることを理解して欲しい。このときは、スカラーの式なの で、方向を云々と言うような文言がこの式とともに現れたと思う。式 (2)のようにベクトルの式に表すと、余計な文言が不要な ので便利である。ここで、 であることに注意が必要である。

実を言うと、本日の学習範囲である真空中の静電場は、この2つの式で全てで ある。過不足なく、この2つの式でおしまいであるが、もう少し便利に計算で きるようにしておく。

これからは、静電場の話をするわけで、力の話はしばらくお目にかからない。 したがって、クーロンの法則は、

$\displaystyle \boldsymbol{E}=\frac{Q(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r_0})}{4\pi\varepsilon \vert\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r_0}\vert^3}$ (4)

と書き換える。物理的な内容は、何も変わっていない。

1.2 発散

話を簡単にするために、座標の原点に1個の電荷$ Q$を置いたとする。これから、 電荷と位置 $ \boldsymbol{r}$での電場の関係を求める。この場合、空間は等方で特別な 方向が無い為、 と言うことがわかる。したがって、原点から$ r$離れた球を考え場合、その表面 の電場$ E_r$は、

$\displaystyle E_r=\frac{Q}{4\pi\varepsilon r^2}$ (5)

となる。これを、球の表面で面積分すると

$\displaystyle \int_{surface}\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{n}dS=\frac{Q}{\varepsilon}$ (6)

となる。球状の表面の電場を積分したものは、その中に含まれる電荷$ Q$を誘 電率 $ \varepsilon$で割ったものになる。これは、球の大きさに関係なく成り 立つ式である。これは、電場の大きさが逆2乗の法則に従うから言えるのであ る。この式も、クーロンの法則を書き換えただけである。

ガウスの定理より、式(6)の左辺は、

\begin{equation*}\begin{aligned}\int_S\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{n}dS &=\int...
...ldsymbol{E}dV+\int_{V_1}\nabla\cdot\boldsymbol{E}dV \end{aligned}\end{equation*}

のように、変化させることができる。ここで、領域$ V_0+V_1$が元の球を表す。 そうして、$ V_0$が原点、すなわち、電荷を含む領域とする。一方、$ V_1$は電 荷を含まない領域である。ベクトル解析の恒等式

$\displaystyle \nabla\cdot\left(\frac{\boldsymbol{r}}{r^3}\right)=0$ (8)

より、$ V_1$での積分の値はゼロである。$ V_0$の場合、原点以外はゼロである が、特異点があるため、その積分はゼロにならない。領域の分割の仕方は任意 で、いくつ物領域に分けても、同じことが言えるので、

$\displaystyle \int_S\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{n}dS=\frac{Q}{\varepsilon}$ (9)

と書くことができる。今度は、式(6)の球の場 合とは異なり、任意の形状で成り立っている。

このことは、非常にありがたく、わざわざ電荷が原点になくても良いことにな る。積分する領域の内部にあれば、式(9)が成り立つわ けである。次に電荷が2個ある場合について考えよう。まずはじめに、 $ \boldsymbol{r}_1$の位置に電荷$ Q_1$を置いた場合、

$\displaystyle \int_S\boldsymbol{E}_1\cdot\boldsymbol{n}dS=\frac{Q_1}{\varepsilon}$ (10)

が成り立つ。次に、この$ Q_1$を取り去って、 $ \boldsymbol{r}_2$の位置に電荷$ Q_2$が ある場合を考える。式(10)と同じ積分範囲で、

$\displaystyle \int_S\boldsymbol{E}_2\cdot\boldsymbol{n}dS=\frac{Q_2}{\varepsilon}$ (11)

が成り立つことが分かる。この2つの電荷が同時に存在した場合の電場 $ \boldsymbol{E}$は、そ のベクトル和なので

$\displaystyle \boldsymbol{E}=\boldsymbol{E}_1+\boldsymbol{E}_2$ (12)

となる。これを、各々が独立に存在した領域での表面積分を行うと

\begin{equation*}\begin{aligned}\int_S\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{n}dS &=\int...
...c{Q_2}{\varepsilon}\ &=\frac{Q_1+Q_2}{\varepsilon} \end{aligned}\end{equation*}

となることが分かる。これと同じことを続けると、

$\displaystyle \int_S\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{n}dS=\frac{\sum_iQ_i}{\varepsilon}$   ただし、$ Q_i$はS内部 (14)

ということが分かる。これは便利な式で、ある閉じた領域内にある電荷の総量 は、その閉じた領域の表面での電場を面積分の値と等しいといっている。電荷 の総量を知りたければ、表面での電場を積分すればよい。

この式はなにも、点電荷のみではなく、連続的に電荷が分布している場合も成 り立つ。電荷密度$ \rho$、これは位置 $ \boldsymbol{r}$の関数のスカラー場、を考える。 すると、式(14)の右辺の和の部分は、積分に置着替え られる。すなわち、

$\displaystyle \int_S\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{n}dS=\frac{1}{\varepsilon}\int_V\rho dV$ (15)

のとおりである。これをガウスの法則の積分形と言う。

次に積分の領域を小さくして、ガウスの法則の微分形を考える。まずは、式 (15)の左辺は、ガウスの定理より

$\displaystyle \int_S\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{n}dS=\int_V\nabla\cdot\boldsymbol{E} dV$ (16)

である。したがって、式(15)は

$\displaystyle \int_V\nabla\cdot\boldsymbol{E} dV=\frac{1}{\varepsilon}\int_V\rho dV$ (17)

となる。でもって、積分領域$ V$をうーんと小さくすると、

$\displaystyle \nabla\cdot\boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})=\frac{\rho(\boldsymbol{r})}{\varepsilon}$ (18)

となる。これがガウスの法則の微分形である。これがマックスウェルの方程式 の最初のものになる。なんのことはない、クーロンの法則を書き直しただけで ある。逆2乗の法則が成り立つと仮定しているから、式 (18)が成り立つのである。

最後に注意を一つ述べておく。式(4)の発散 (divergence)をとり、体積積分してはならない。原点以外の発散はゼロである が、原点は特異点であるため、そこは慎重に取り扱わなくてはならない。

1.3 回転

次に、電場の回転がどうなっているか考える。その前に、電場の線積分を考え る。図1の場合の二つの積分経路AとBの積分を考えると。電 場の線積分の結果は、どちらも同じ値になる。それは、

\begin{equation*}\begin{aligned}\int_{p_1}^{P_2}\boldsymbol{E}\cdot d\ell &=\int...
...varepsilon}\left(\frac{1}{r_1}-\frac{1}{r_2}\right) \end{aligned}\end{equation*}

である。どのような経路をとっても、その電場の線積分はスタート点とゴール 点で決まる。
図 1: 道筋AとBでの電場の線積分の比較
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.7]{figure/int_E_ds.eps}

1つ電荷ではなくて、もっとたくさんの電荷がある場合、電場はそのベクトル 和、 $ \boldsymbol{E}=\boldsymbol{E}_1+\boldsymbol{E}_2+\boldsymbol{E}_3+\cdots$となる。したがって、電場 の線積分は、それぞれの線積分

$\displaystyle \int_{p_1}^{P_2}\boldsymbol{E}\cdot d\ell$ $\displaystyle =\int_{p_1}^{P_2}\left(\boldsymbol{E}_1+\boldsymbol{E}_2+\boldsymbol{E}_3+\cdots\right)\cdot d\ell$ (20)
  $\displaystyle =\int_{p_1}^{P_2}\boldsymbol{E}_1\cdot d\ell+ \int_{p_1}^{P_2}\boldsymbol{E}_2\cdot d\ell+ \int_{p_1}^{P_2}\boldsymbol{E}_3\cdot d\ell+\cdots$ (21)

となる。各々の電荷のつくる電場の線積分は、道筋に依存しないのは先ほど述 べたとおりである。したがって、多くの電荷がある場合、これは任意の静電場 に相当、その線積分は道筋に依存しないと結論できる。

このことから、また別の結論も引き出せる。任意の閉曲線の沿った線積分

$\displaystyle \oint\boldsymbol{E}\cdot d\ell=0$ (22)

となる。したがって、静電場の回転は

\begin{equation*}\begin{aligned}\nabla\times\boldsymbol{E}&=\lim_{S\to 0}\frac{\oint\boldsymbol{E}\cdot d\ell}{S}\ &=0 \end{aligned}\end{equation*}

となる。

以上より、静電場の発散を表す式(18)と回転を示す式 (23)を示すことができた。先週述べたように、発 散と回転が分かったので、これで静電場は決まる。

1.4 スカラーポテンシャルあるいは電圧

静電場では、その回転はゼロであるから、ベクトル解析によれば、

$\displaystyle \boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})=-\nabla\phi(\boldsymbol{r})$ (24)

となる、スカラー場 $ \phi(\boldsymbol{r})$があるはずである。これは、勾配の回転は 常にゼロになることからきている。あるいは、式(19)のよう に積分の経路に依存しないスカラー量$ \phi$という量を決めることができる。

$\displaystyle \phi(\boldsymbol{r}_2)-\phi(\boldsymbol{r}_1) =-\int_{\boldsymbol{r}_1}^{\boldsymbol{r}_2}\boldsymbol{E}\cdot d\ell$ (25)

このスカラー場 $ \phi{\boldsymbol{r}}$のことをポテンシャルと言う。ポテンシャルの 定義式(24)を積分したら得られる。聞きなれた言葉 で言うと、電圧のことである。重力場での高さと同じ役割を果たす。

次に、位置の関数としてのポテンシャルを決めたい。一般にポテンシャルの値 に、任意の定数を足し合わせても、その電場の大きさは変わらない。定数は微 分(勾配)すると、ゼロになるからである。ポテンシャルで重要な意味を持つも のは、その差である。どこかに基準を置いて、そこからの差でポテンシャルの 大きさを定義する。ようするに、山の高さは海面を基準にするのと同じである。 あるいは、電気回路において、どこかにアース電位(0V)を決めるのと同じであ る。基準を変えても、物理法則は何も変わらないことに注意が必要である。

通常、無限遠点をポテンシャルの基準とする。すると、

\begin{equation*}\begin{aligned}\phi(\boldsymbol{r}) &=-\int_{\infty}^{r}\boldsy...
...i\varepsilon r^2}dr\ &=\frac{Q}{4\pi\varepsilon r} \end{aligned}\end{equation*}

となる。これで、点電荷$ Q$が原点にあるときのポテンシャル$ \phi(r)$が決め られた。 $ r\to\infty$とするとそのポテンシャルはゼロとなる。要するに、無 限遠点のポテンシャルがゼロになるように基準が決められたのである。

もっと一般的に書くと、ポテンシャルは

$\displaystyle \phi(\boldsymbol{r})=\frac{Q(\boldsymbol{r})}{4\pi\varepsilon \vert r-r_0\vert}$ (27)

となる。
ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成16年9月28日


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