2 ベクトル場の回転とストークスの定理

2.1 ベクトル場の回転

2.1.1 大きな領域での話

完全流体の渦の速度は、半径に反比例する。

$\displaystyle v=\frac{\Omega}{2\pi r}$ (1)

ここで、$ \Omega$は渦の強さを表し、これがある位置が渦の中心である。そう して、渦が半時計回りの時、 $ \Omega \geq 0$とする。これを取り囲むように 積分を行うと、

$\displaystyle \oint \boldsymbol{v}\cdot d\boldsymbol{l}=\Omega$ (2)

となる。これは、これは渦の中心を取り囲んで、一回りすれば、積分の経路に よらずいつも同じ値をとる。それは、次のように考える。渦の中心を中心に同 心円の積分の値はいつも同じ、$ \Omega$になることは、簡単な計算で分かる。 これが成り立つのは、流速 $ \boldsymbol{v}$が半径に反比例しているからである。ここ で、図1のように、1周の $ \Delta\theta/2\pi$を考える。当 然、 $ \Delta\theta$は非常に小さいとする。この場合、同心円状の積分の一部 である、線分1の積分は $ \boldsymbol{v}\cdot d\boldsymbol{l}=vr\Delta\theta$になるのは、 直ちに分かる。次に、任意の積分経路の一部である線分2を考える。 $ \Delta\theta$が非常に小さいので、線分2の平均的な流速も$ v$になるであろ う。線分の長さは $ r\Delta\theta/\cos(\phi)$となる。ただし、式 (2)の積分は内積となっているため、

\begin{equation*}\begin{aligned}\boldsymbol{v}\cdot d\boldsymbol{l} &=\frac{vr\Delta\theta}{\cos(\phi)}\cos(\phi)\\ &=vr\Delta\theta \end{aligned}\end{equation*}

となる。したがって、線分1に沿っても、線分2に沿っても積分の値は同じであ る。このことから、どこのパスで積分しても値は同じことが理解できる。

これまでの話は渦であったが、電流と磁場は

$\displaystyle \boldsymbol{B}=\frac{\mu_0 I}{2\pi r}$ (4)

という関係があるので、同じことが言える。この式の左辺はベクトル、右辺は スカラーになっており矛盾しているが、今は細かいことを考えないこととする。 後で、静磁場を学習するときに矛盾ない式を示すので我慢してほしい。磁場の 式(2)に対応するものは、

$\displaystyle \oint\boldsymbol{B}\cdot d\boldsymbol{l}=\mu_0 I$ (5)

となる。
図 1: 積分範囲
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/uzu_int.eps}

2.1.2 微小領域での話

次に、教科書に従い、微小領域でベクトル場の回転を考える。ただし、教科書 の表現は気に食わないので、少し図2のように変える。積分 は、図の矢印に沿って一周、積分を行う。

まず、図の下の部分と上の部分の積分を考える。ただし、$ \delta x$$ \delta y$が非常に小さいので、積分は積の和に置き換えられる。同じx座標 で、上の部分と下の部分の積分は

\begin{equation*}\begin{aligned}\int_{\text{top,bottom}} &=v_x(x,y)\delta x-v_x(...
...\frac{\partial v_x}{\partial y}\delta y \delta x \\ \end{aligned}\end{equation*}

となる。テイラー展開の1次まで計算し、2次以降の高次を無視するのは常套手 段でよく覚えておく必要がある。同様に、左右の積分は、

$\displaystyle \int_{\text{left,right}}=\frac{\partial v_y}{\partial x}\delta x \delta y$ (7)

となる。この上下の積分と左右の積分を足し合わせて、一周の積分とする。そ れは、

\begin{equation*}\begin{aligned}\oint \boldsymbol{v}\cdot d\boldsymbol{l} &=-\fr...
... x} -\frac{\partial v_x}{\partial y}\right)\delta S \end{aligned}\end{equation*}

となる。この式の右辺の括弧内は、まさに応用解析で学習したベクトル場の回 転である。すなわち、

\begin{equation*}\left\{ \begin{aligned}(\nabla\times\boldsymbol{v})_x= \frac{\p...
...artial x}-\frac{\partial v_x}{\partial y}\\ \end{aligned} \right.\end{equation*}

である。したがって、微小区間の積分は、

$\displaystyle \oint \boldsymbol{v}\cdot d\boldsymbol{l} =\nabla\times\boldsymbol{v}\cdot d \boldsymbol{S}$ (10)

と書き改めることができる。この積分の値は、微小領域 $ \delta S=\delta x
\delta y$の含まれる渦に等しくなる。式で表すと、

$\displaystyle \nabla\times\boldsymbol{v}\cdot d \boldsymbol{S}=\Omega$ (11)

となる。次に渦の密度 $ \boldsymbol{\omega}$を次式より

$\displaystyle \Omega=\delta \boldsymbol{S} \cdot \boldsymbol{\omega}$ (12)

定義する。すると、

$\displaystyle \nabla\times\boldsymbol{v}=\boldsymbol{\omega}$ (13)

という関係が導かれる。要するにベクトル場を微分( $ \nabla\times$)すれば、 その部分の渦の中心の密度が得られるわけである。これと、同じ関係

$\displaystyle \nabla\times\boldsymbol{B}=\mu_0\boldsymbol{i}$ (14)

が磁場と電流にもある。ここで $ \boldsymbol{i}$は電流の密度である。この式の言って いることは、磁場(ベクトル場)を微分( $ \nabla\times$)すれば、その部分の電 流の密度が得られるわけである。これは、電流が渦の中心、磁場が流体の速度 と同じ関係になっているからである。
図 2: 微小領域での回転
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/int_rot.eps}

2.1.3 ストークスの定理

先ほどの $ \nabla\times\boldsymbol{B}\cdot d\boldsymbol{S}$は、微小区間の回転であった。 それを教科書の図2.7のように足し合わせると、隣同士の同じ積分領域はキャ ンセルされるので、

$\displaystyle \int_S \nabla\times\boldsymbol{B}\cdot d\boldsymbol{S}=\oint \boldsymbol{B}\cdot d\boldsymbol{l}$ (15)

という関係が得られる。これをストークスの定理という。

このストークスの定理から、

$\displaystyle \oint\boldsymbol{B}\cdot d\boldsymbol{l}=\mu_0 I$ (16)

が得られる。この式が言っていることは、ある閉じた領域で一周にわたり磁場 を積分すれば、電流が分かるということである。
ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成16年9月28日


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