1 電荷分布と電場

1.1 電場の求め方

電荷分布が与えられたときに電場を求める方法は、今まで学習した3つの方法 がある。復習を兼ねて、それぞれの方法について説明しておく。静電場の問題 を一般化すると、図1のようになる。体積$ V$の中に、電 荷が密度 $ \rho(\boldsymbol{r}^\prime)$で分布している場合、位置 $ \boldsymbol{r}$での電場 $ E(\boldsymbol{r})$を求めるのである。
図 1: 電場の計算
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.7]{figure/E_by_dq.eps}

1.1.1 電場の重ね合わせ

最初の方法は、クーロンの法則をそのまま適用して、電場を計算することで ある。これは、最も原始的で最も効率の悪い方法であるので、通常は使われな い。

クーロンの法則

$\displaystyle \boldsymbol{F}=\frac{Qq(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r_0})}{4\pi\varepsilon\vert\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r_0}\vert^3}$ (1)

と電場の定義式

$\displaystyle \boldsymbol{F}=q\boldsymbol{E}$ (2)

から、離散的な電荷$ Q$の場合、電場は

$\displaystyle \boldsymbol{E}=\frac{Q(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}^{\prime})}{4\pi\varepsilon \vert\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}^{\prime}\vert^3}$ (3)

である。これを連続的電荷分布$ \rho$、すなわち電荷密 度に置き換えた場合、

$\displaystyle \boldsymbol{E}= \frac{1}{4\pi\varepsilon}\int_{V^\prime}\frac{\rh...
...l{r}^{\prime})} {\vert\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}^{\prime}\vert^3}dv^{\prime}$ (4)

となる。このベクトルの式を、成分で書き表すと、

\begin{equation*}\left\{ \begin{aligned}E_x&= \frac{1}{4\pi\varepsilon}\int_{V^\...
...t]^{3/2}} dx^{\prime}dy^{\prime}dz^{\prime} \end{aligned} \right.\end{equation*}

となる。もちろん、 $ \vert\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}^{\prime}\vert=\sqrt{(x-x^\prime)^2+(y-y^\prime)^2+(z-z^\prime)^2}$ という関係を用いている。この式(5)を使えば、 電荷密度分布が分かっていれば、どんな静電場の問題でも解けるといえる。し かし、実際に積分が面倒なので、ほとんどの場合、この式を使うことは無い。 通常、このような積分はうんざりするほどの手間がかかり、コンピューターで ないと計算できないであろう。

クーロンの法則を直接使って計算するような問題は、次のようなものがある。

距離$ \ell$離れて、2つの電荷$ +Q$$ -Q$が存在する。その2つの電 荷の直線上での電場を求めよ。

1.1.2 ガウスの法則

先週の授業でやったように、クーロンの法則から、ベクトル解析の知識を使う とガウスの法則

  $\displaystyle \int_V\nabla\cdot\boldsymbol{E} dV=\frac{1}{\varepsilon}\int_V\rho dV$    積分形 (6)
  $\displaystyle \nabla\cdot\boldsymbol{E}=\frac{\rho}{\varepsilon}$    微分形 (7)

を導くことができる。実際に、電場を計算する場合、この積分系を使うことが 多い。

例えば、次のような単純な例を解く場合である。この単純な例ですら、クーロ ンの法則を直接適用して、計算できないことが分かる。対称性の良い問題の場 合は、ガウスの法則は強力である。

半径$ a$の球の中に、電荷密度$ \rho$で電荷が一様に分布している。 球の内外での電場を求めよ。

1.1.3 スカラーポテンシャル(電圧)

3つめの方法は、スカラーポテンシャルを求めて、それを微分することにより 電場を計算する方法である。この方法が、最も汎用的で、複雑な問題を解く場 合、一般的に用いられる。

先週、示したようにスカラーポテンシャルは、

$\displaystyle \boldsymbol{E}=-\nabla\phi$ (8)

と定義される。このスカラーポテンシャルが満たす方程式は、この式を微分形 のガウスの法則に放り込めば導くことができる。これは、ポアソン方程式

$\displaystyle \nabla^2\phi(\boldsymbol{r})=-\frac{\rho(\boldsymbol{r})}{\varepsilon}$ (9)

と呼ばれる、偏微分方程式である。今までの、クーロンの法則やガウスの法則 から電場を計算する場合、ベクトルの演算が必要で大変であった。しかし、こ のポアソン方程式は、スカラーなので、計算量が減り楽である。ただし、電場 を求める場合、このスカラーポテンシャルの微分が必要ではある。

先週述べたように、このポアソン方程式の一般解は、

$\displaystyle \phi(\boldsymbol{r})= \frac{1}{4\pi\varepsilon_0} \int\frac{\rho(\boldsymbol{r}^\prime)}{\vert\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}^\prime\vert}dv^\prime$ (10)

である。微分方程式(9)、あるいは積分の式 (10)を計算して、スカラーポテンシャル $ \phi(\boldsymbol{r})$を求める。そして、電場は、それを微分すれば求められる。

$\displaystyle \boldsymbol{E(\boldsymbol{r})}=-\nabla\phi(\boldsymbol{r})$ (11)

次のような問題に、このスカラーポテンシャルを適用できる。

半径$ a$の円板に面密度$ \sigma$で電荷が一様に分布していると き、円板の中心軸にそって、円板の中心から$ x$の距離での電場を求 めよ。

ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成16年9月28日


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