5 付録

5.1 ENIACの故障確率

ENIACの故障確率を計算してみよう。真空管の平均寿命を$ T_f$とすると、1本 が$ \Delta T$の時間に故障する確率は $ \frac{\Delta T}{T_l}$となる。故障し ない確率は、 $ 1-\frac{\Delta T}{T_l}$となる。この真空管が$ N$本あって、 $ \Delta T \times n_t$の間故障しない確率$ P(n_t T)$は、

$\displaystyle P(n_tT)=\left(1-\frac{\Delta T}{T_l}\right)^{Nn_t}$ (1)

となる。これが、$ n_tT$の間故障しない確率である。ここで、 $ \Delta
T \rightarrow 0$を計算したいわけであるが、そのために、 $ n_T \Delta T=T$ とおいて、式を整理すると、

$\displaystyle P(T)=\left(1-\frac{\Delta T}{T_l}\right)^{\frac{NT}{\Delta T}}$ (2)

となる。この式でも、まだ見通しが悪い。そこで $ x=-\frac{\Delta T}{T_l}$と おく。すると、

\begin{equation*}\begin{aligned}P(T)&=(1+x)^{-\frac{NT}{xT_l}}\\ &=\left\{(1+x)^...
...xt{$x \rightarrow 0$の場合}\\ &=e^{-\frac{NT}{T_l}} \end{aligned}\end{equation*}

となる。従って、$ N$本の真空管、全てが健全である平均時間間隔$ T_p$は、

\begin{equation*}\begin{aligned}T_p&=\int_0^\infty P(T)dT\\ &=\int_0^\infty e^{-\frac{NT}{T_l}}dT\\ &=\frac{T_l}{N} \end{aligned}\end{equation*}

となる。この結果は、至極あたりまえで、平均寿命を真空管の本数で割ったこ とになっている。このようにあたりまえの結果では有るが、ちゃんと計算して 導くことができるのは面白いことである。私は、小一時間程度、この式を導く ために遊んだ。

約20000本の真空管が使われているENIACの場合、その寿命が2000時間とすると、 約1/10時間(6分)で故障することになる。これでは使い物にならないので、 ENIACの開発スタッフは猛烈な努力をして、これを改善したようである。大体、 真空管の故障は、週に2〜3本程度であったということである。



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著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年8月22日


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