A.2 二階線型常微分方程式

コイルとコンデンサーの両方が含まれる回路を表す微分方程式は、二階線型常微分方程式 になることが多い。「LCRの過渡応答」の実験では、

$\displaystyle y^{\prime\prime}+\kappa y^\prime + \lambda y=\mu$ (A.9)

の形の微分方程式が現れる。ここで、$ \kappa$, $ \lambda$, $ \mu $は定数である。この微 分方程式の解き方を示す。

式(A.9)のように同次項がある時(非同次と言う)、その一般解は、

$\displaystyle {(\textrm 一つの特殊解)}+{\textrm(同次方程式の一般解)}$    

の形で表すことができる。2階の非同次微分方程式を解く場合、これらの2つの階を求め、 その和を一般解とするのは定石である。

式(A.9)の特殊解$ y_1$は、簡単に分かる。それは、

$\displaystyle y_1=\frac{\mu}{\lambda}$ (A.10)

となる。これを元の式に代入すれば、その解になっていることは直ちに分かる。

残る問題は、同次方程式

$\displaystyle y^{\prime\prime}+\kappa y^\prime + \lambda y=0$ (A.11)

の一般解を探すことである。科学技術の分野では、このタイプの方程式では、

$\displaystyle y=e^{i\omega x}$ (A.12)

を解と仮定する。そして、これが解となるように$ \omega$を決める。これを元の同次微分 方程式に代入して整理すると、

$\displaystyle \omega^2-i\kappa\omega-\lambda=0$ (A.13)

となる。すると、2次方程式の解の公式より、$ \omega$

$\displaystyle \omega=\frac{\kappa i\pm\sqrt{4\lambda-\kappa^2}}{2}$ (A.14)

とならなければならない。これら、2つの$ \omega$とも、式 (A.11)の解となる。また、この微分方程式は線型な ので、重ね合わせの原理が成り立つため、2つの解の線型和も解となりうる。従って、同 次微分方程式(A.11)の一般解$ y_2$は、

$\displaystyle y_2= c_1\exp\left(\frac{-\kappa+i\sqrt{4\lambda-\kappa^2}}{2}x\right)+ c_2\exp\left(\frac{-\kappa-i\sqrt{4\lambda-\kappa^2}}{2}x\right)$ (A.15)

となる。これは、2階の微分方程式で2個の定数があり一般解にふさわしい。

ところが、式(A.13)が重根、すなわち、 $ 4\lambda-\kappa^2=0$の場合、事情が異なる。式 (A.15)の未知数が一つなくなり、一般解とならない。 この場合、一般解$ y_2$

$\displaystyle y_2=(c_1+c_2x)\exp\left(-\frac{\kappa}{2}x\right)$ (A.16)

となる。元の式(A.11)に代入して確かめよ。

以上をまとめると、微分方程式(A.9)の一般解は、

$\displaystyle y=\begin{cases}%
\cfrac{\mu}{\lambda}+ c_1\exp\left(\cfrac{-\kapp...
...eft(-\cfrac{\kappa}{2}x\right) & \text{$4\lambda-\kappa^2=0$のとき} \end{cases}$ (A.17)

となる。これは、 $ 4\lambda-\kappa^2$の値が正や負、0により、曲線の形がかなり 異なるので注意が必要である。
ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成17年5月13日


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