1 物質中の電場

原子に電場を加えると、分極が発生し、図1のように電気双極子 $ \boldsymbol{p}$として取り扱うことができる。物質中では、これが密度$ N$で存在するとして、 それを考慮して分極ベクトル

\begin{equation*}\begin{aligned}\boldsymbol{P}&=Nq\boldsymbol{\delta} &=N\boldsymbol{p} \end{aligned}\end{equation*}

が定義できる。図からわかるように、ある表面積$ S$を通り抜ける総電荷量$ Q$ は、

\begin{equation*}\begin{aligned}Q&=-SNq\delta\cos\theta &=-S\boldsymbol{P}\cdot\boldsymbol{n} \end{aligned}\end{equation*}

である。ここで、 $ \boldsymbol{n}$は表面の法線方向である。負号になる理由は、法線 方向と分極ベクトルの定義を考えれば分かるはずである。これから、単位表面あたり 通り抜ける電荷量は、

$\displaystyle \sigma_p=-\boldsymbol{P}\cdot\boldsymbol{n}$ (3)

となる。この分極により、閉じた空間の電荷量は

$\displaystyle \int \rho dV$ $\displaystyle =\int \sigma dS$    
  $\displaystyle =-\int \boldsymbol{P}\cdot\boldsymbol{n} dS$    
     ガウスの定理より    
  $\displaystyle =-\int \div{\boldsymbol{P}}dV$ (4)

となる。この積分は任意の領域で成り立つため、

$\displaystyle \rho_p=-\div{\boldsymbol{P}}$ (5)

を導くことができる。

次に、この分極ベクトルが作る電流であるが、これは式(3)から、直ちに 導くことができる。

\begin{equation*}\begin{aligned}\boldsymbol{j}_p &=\frac{\partial \boldsymbol{P}}{\partial t} \end{aligned}\end{equation*}

これを分極電流と言う。これで、分極ベクトルによる電荷と電流を導くことgあできたので、誘電体中のMaxwellの方程式を書き直す準備ができた。

図 1: 原子が分極する様子
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/porlarization.eps}

図 2: 境界を越えての電荷の移動(境界と分極ベクトルが平行)
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.8]{figure/porlarization2.eps}
図 3: 境界を越えての電荷の移動(境界と分極ベクトルが角度を持つ)
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.8]{figure/porlarization3.eps}


ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成16年12月28日


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